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-1度目はストーリー、2度目はセリフや表情を。素敵なドラマは何度も楽しめる。-


このページは、No.1133 哉子がお伝えします。


★FLIGHT #04 「救出作戦」★

★☆ ストーリー

中国・上海でホテル火災が発生した。元たちがくつろぐクルーたちのリフレッシュコーナーにあるTVでも、それを伝えるニュースが流れている。
TVに見入っている元・安住・ジェーンの話題は、負傷した日本人の帰国させるために政府から要請された明朝発の緊急チャーター便。しかし、その特別便に誰がクルーとして配されるか?までは安住の耳にもまだ届いてはいなかったが、安住は、かなり優秀な人間が選ばれるだろうと予想していた。
「俺は飛ばないよ」とつぶやくジェーンに、間髪入れず「ムリムリ」と笑いをもらすコーパイ2人。ジェーンの方も負けてない。ビシッと格好つけて、火災にあったホテルには2番目の妻キャサリンとの思い出が詰まっているので切なくて飛べやしない、と情感たっぷりに語る。
心配しなくても指名されないですよ、と安住がちょっと小バカにしたような物言いをしたので、ジェーンと安住の間で言い争いが始まる。別にそれはそれで勝手にやってくれればいいのだけど、元の目の前で言い争うもんだから、元は「TVが見えない」と2人を追い払うような仕草を見せる。
元「どうせオレらが選ばれるが選ばれることないんですから」
ジェーン「ちょっと待て。”オレら”ってなんだ。一緒にすんなよ」
いずれにせよ3人のケンケンゴウゴウはきりがない。
そんな中、元が乗員室長から呼び出しを受けた。呼ばれる理由に心当たりがないのだが…。

その頃、C.A.の富樫は、上司より特別便のチーフ・パーサーを仰せつかっていた。
チャーター便のキャプテン直々の指名だというのも含め、大きな任務に喜び、2つ返事で快諾する。さらに上司から任務遂行後1週間の休暇を取得するように、と言われた。これには「お気遣いなく」と一礼してその場を離れようとすると、その休暇中にゆっくりと考えてもらいたいことがある、と引き止められた。
何を考えるのか見当がつかない富樫は上司に尋ねた。
その後、更衣室に入った富樫は、ロッカーの前で上司に言われたことを思い返す。
「訓練センターの教官として推薦したい」という上司の言葉。それは空を降りて地上勤務に就くことだった。体力面への危惧を見せながら半ば強引に昇進の道へ導こうとする上司の「今回の特別便が集大成だ」という意気揚々な言葉が駆け巡り、思わず「集大成…」と口に出す富樫だった。

元は普段入ったことのない空間に、探りを入れるように視線を投げながら乗員室長室へ向かった。

ハンガーでも特別チャーター便の対応で多くの整備士が集まっていた。
作業は班ごとに割り振られ、歩実が所属する班は、緊急会議にて搭乗クルーの要請を確認した上での配送ベッドの設置その他、備品の設営を担当することになった。
これが成田ベースの整備魂の見せどころ。その気合いを胸に、整備士たちはそれぞれの担当に散らばった。

乗員室長【清水紘治】から特別便のコーパイを言い渡された元は、まさか自分に任されるとは思っていなかったので、これ以上ないくらいの驚きよう。乗員室長からも、元の年齢でこれほどの重要任務に就くのは珍しいと言われる。
しっかり務めるよう言葉を掛けられ承諾しながらも、やはり首をかしげる元。他のコーパイに比べて訓練時間も長かった自分の実績不足は誰よりも自覚している。だから「納得して飛びたい」と思い切って選ばれた理由を尋ねてみた。
すると、チャーター便のキャプテンからのご指名だとのこと。それが誰かと重ねて尋ねると、乗員室長の口から出たのは香田だった。即座に顔色が変わる元だったが、元と香田の確執を知らない乗員室長は、香田の冷静で正確な判断力を高く評価していて、その香田が指名した元にも熱い期待を寄せる。
「頑張れよ」との言葉に「はい」と力強く返事をして乗員室長室を出た元は、香田の指名という事実を受け入れきれないものの、自分に課せられた重要な任務に気を引き締めつつ気合いを入れた。

フライトコースに目を通しながら緊急会議に向かう元。
すると、どっさりとファイルを持った歩実が横の通路から現れ、元の前を行く。
同じ目的地に向かっていることに驚く歩実のファイルを半分持って、自分が特別機のコーパイだと告げる元に、歩実は更に驚きの声を上げる。
元よりもっとちゃんとしたパイロットが就くと思っていたと言う歩実。
対抗して飛行機に乗れない歩実の弱みを持ち出す元。
こんな緊急事態でも2人のやりとりは相変わらずだ。

うららは太田にチャーター機のC.A.として推薦してくれと頼んだが、既にクルーは決定済みと一蹴されてしまう。
「太田さんじゃなくても富樫さんからでもいいので…」そう言って食い下がるうららの言葉に、一層表情をこわばらせた太田は、うららの未熟さを並べて無理!ときっぱり。
なおも諦めないうららだったが、同僚のC.A.にデリカシーのなさを呆れられる。特別機のチーフパーサーに選ばれなくてショックを受けている太田には、確かに傷口に塩を塗り込んでいるようなものだった。

上海臨時特別機999便、緊急対策会議。
香田「まずはじめに言っておく。この特別機は国を代表するフライトである。
   最大の目的はホテル火災の負傷者を安全に、無事に日本へ搬送することだ。
   万にひとつも、負傷者が機内で命を落とすなど、絶対にあってはならない。
   各自肝に命じて全力を尽くしてくれ。」
いきなりこんな香田の挨拶から始まる会議。この特別機がどれだけ重要なフライトであるか、さらに重みを増してくる。
そしてまずは元からのルートチェックが行われ、大規模かつ詳細なるブリーフィングが始まった。

安住「なーんで新海なんですかね」
ジェーン「知らねぇよ」
今回すっかり蚊帳の外の2人、リフレッシュコーナーにそのまま留まっていた。どちらも自分が選ばれなかったこと、元が選ばれたことに納得がいかない様子。

会議では、富樫から搬送する負傷者の説明が行われていた。
搭乗予定の負傷者は8人、その中でも重傷を負ったのは相馬るり子【西田尚美】という新婚旅行中の女性で、その後の人生を共にするはずだったパートナーは火災による死亡が既に明らかになっていた。るり子は全身に2度・40%の熱傷を負い、意識ははっきりしているが鎮静剤を投与されていて、搭乗の際はドクターも家族も付き添うことが伝えられた。

整備の説明は阿部から行われた。
ドックアウト(格納庫からの整備完了機搬出)は明朝AM7:30の予定と報告したが、香田から、OCC(オペレーション・コントロール・センター/24時間体制の運航管理部門)の決定である明朝AM7:00をキープすることを命じられ、阿部も、一瞬の間をおいて了解する。
歩実からは機内配置の確認が。
重傷者用ベッドの設置場所について質問をしたが、答えるべき立場の富樫が資料に気をとられて聞いていなかった。富樫には香田から厳しい叱責が浴びせられ、結局歩実の質問には香田が指示を出した。
たまりかねて「キャビンのことは富樫チーフに聞いた方が…」と言う元だったが、一刻を争う会議で繰り返しはない。そんな自分のやり方についてこられなければ代わりはいくらでもいる、とワンマンな姿勢を貫く香田。
最後に、準備開始及び、離陸の時間が発表され、会議は終了。
言うべきことだけを言い、香田は会議終了直後に席を立つ。
「やりにくいだろうがしっかりやってくれ」そんな雰囲気を漂わせながら乗員室長が元の肩を叩いていく。
富樫を励まそうとするC.A.たちからは香田への不満もあがっていた。
歩実「けど、香田さんは間違ったことは言ってないと思います。一刻を争うのは事実ですから」
歩実にも厳しいことを言われた富樫だったが、素直に自分の非を認めて謝るのと同時に「頑張りましょう」とC.A.たちとの結束を固めた。

会議室を出た富樫は、エレベーターの前で先に出ていた香田に追いついた。
会議での失態を詫びる富樫は、香田に、今回のフライトが最後になるかもしれないことを告げた。
香田は知っていた。知っていてC.A.の最後を飾るにふさわしいフライトだろうとチーフに指名したと言う。
富樫が地上勤務につくことに賛成なのかと問うと、昇進することは喜ぶべきことで反対する理由はない、とも…。
香田「このフライトを君の花道だと思って、力を尽くしてくれ」
そう言い残して到着したエレベーターに乗ってさっさと行ってしまった香田。富樫は閉じたエレベーターの前で「花道…」とつぶやいて考え込んだ。

エレベーター前の2人のやりとりを、元は、壁越しに聞いていて、富樫に合わないようにきびすを返すと、歩実と出くわした。
一言二言交わして別々の方向に歩き出したが、すぐさま歩実が元を呼びとめ、会議で富樫に言った言葉について「悪いこと言ったかな?」と尋ねてきた。
言葉ではなくタイミングが悪かった、と答える元は、富樫が最後のフライトになるかもしれないことを教えた。
それでも、正しいことを言っている香田を支持する歩実。香田が正しいことは元も分かってはいるが、それ以上に一緒に飛ぶクルーを大切にしたいという思いの方が強い。
歩実「…考え方の違いだね」
そう言って足早に元の前から去って行く歩実を、元は、険しい表情を浮かべながら見送った。

帰宅した後も限られた時間の中でフライトコースを確認する元。
TVでは休むことなくホテル火災のニュースが流れていて、8時間経過した今やっと鎮火の方向へ向かい始めたと知らせたところでTVを消し、もう1度フライトコースに目を落とした。

明朝。
香田と元は準備を整えシップに向かって緊張した面持ちでターミナル内を歩く。
歩実は重傷者用のベッドを設置していた。
C.A.たちも富樫を先頭にシップに向かっていた。
ハンガーより搬出されるシップ。
香田の指示のもと極力揺れを回避すべく航行データを入力していく元。
キャビンでは、富樫をはじめとするC.A.たちが、続々と搭乗する救援隊員の誘導を行っていた。
全ての準備が順調に進み、上海行きの特別機は無事定刻通りのテイクオフを果たした。

上海浦東空港。
重傷を負った相馬るり子が合流した医師と共に機内に運び込まれた。
歩実が設置したベッドに横たわり、医師の看護を受ける彼女は鎮痛剤が効いていた。
航行中の機内の状況を報告した上で医師からるり子への対応を確認する富樫。
他のC.A.るり子以外の負傷者の応対に追われていた。

結局特別機クルーにはなれず成田空港で待機のうららは、そんな特別機の内情をおもんばかるよりも、元がTVに映ってやしないかとすっかりミーハー気分。
こんなミーハー気分は彼女だけとしても、うららが向かったリフレッシュコーナーでは他のC.A.やG.H.がTVを食い入るように見ていた。話題はもちろん特別機。TVから行きの所要時間が2時間50分だったことが伝えられたようで、C.A.から香田への賞賛の声が上がる。一緒にTVを見ていた安住は苦虫をかみつぶしていたが…(苦笑)

特別機のコックピットでは帰路のデータ入力が始まっていた。
時に状況に応じた判断を上手く出せなかったりする元に、香田が的確な指示を出して、順調に準備は進んでいた。

TVに見入っていたのはターミナルのC.A.だけではなかった。
歩実は、自宅でTVを見ていた。画面に映るシップを見ていると、香織から元が乗っているのかと尋ねられる。返事に困る歩実の態度だけで、察しのいい香織は嬉しそうに歩実にちょっかいを出す。
歩実「あのね、あたし別にあいつとは何もないから」
香織「ふーん。でも、よさそうな人だったじゃない」
歩実「でもバカだから」
香織「パイロットなのに?」
歩実「パイロットでもバカはいるの」
香織「ふーん」
歩実「コーパイのくせに平気で機長にぶつかっていくし、
   自分のことで手一杯なのに妙に仲間の気持ちとか、理解しようとしちゃってるし。
   不器用で、バランス悪くて…見ててむかつくよ…」
「むかつく」というか…そんな「バカ」な元が気掛かりでならないような表情を見せる歩実だった。

復路フライトもテイクオフ間近。
元は意を決して何故自分をコーパイに指名したのか香田に尋ねてみた。すると香田は、以前優秀なコーパイと日本人救援便を運航した経験を語る。
香田「彼は失敗を恐れるあまりプレッシャーを感じて100%の能力を発揮出来なかった。
   いくら優秀でも能力が発揮出来ないやつではリスクが大きい。
   その点君ならプレッシャーに押しつぶされることなどあるまい。
   君程度の能力ならリスクの度合いも想定できる。」
「わざわざそんな嫌味言うために俺を選んだみたいですね。」
香田「不服なら2度と指名しない。さっきも言ったはずだ。代わりはいくらでもいる」
反論しようとしたところにキャビンの富樫から準備完了の連絡が入る。
重傷のるり子の状態を確認すると、今は眠っているとのことだった。

軽傷者や救援隊員のお世話を他のC.A.に任せて、富樫は、るり子についていた。傍にいたいという両親も、責任を持って世話をするという富樫に、全てを任せて席に戻った。
富樫も一旦席についたところで、シップが動きはじめる。
するとるり子が目を覚まし、手を伸ばして自分をさえぎっているカーテンをつかんだ。カーテンをとめていたマジックテープのはがれる音で、るり子の異変に気付いた富樫は、すぐさま彼女のもとへ。それにつられるように、るり子の両親も後に続く。
優しく気遣いながら声を掛ける富樫。
るり子が何か話したそうに酸素吸入器をはずそうとしていたので、医師がそれをはずしてやった。
るり子は一緒に旅行をしていた夫を探してその名を口にする。その様子を見た富樫が両親の方へ振り返ると、両親は激しく首を横に振った。るり子は夫が亡くなったことを知らされてなかったのだ。
夫が見つかっていないのであれば日本に帰れない、と泣き叫ぶるり子を一時原田【加藤貴子】に任せて、富樫はコックピットに向かった。
るり子が意識を回復し混乱状態にあることを報告し、離陸を待つように香田に願い出る富樫。医師の判断では鎮静剤を投与するということだったが、富樫は、混乱するるり子への気遣いを見せ、離陸を躊躇するような言葉を口にする。
そんな富樫に、早急に落ち着かせるよう命ずる香田から与えられた時間はわずか5分。一刻も早く負傷者を帰国させる使命を第一に考える香田は「それ以上待てない」と言及する。
ちょっと納得出来ない元は今にも舌打ちしそうな表情をあらわにする。
その時間の短さに一瞬目を伏せた富樫だったが、覚悟を決めたように力強く「かしこまりました」と答えて急いでキャビンへ戻っていった。
管制塔に5分の遅れを伝える香田。
5分では無理だと言って食ってかかる元だったが、香田は頑として取り合わない。元のそれは、最後のフライトになるかもしれない富樫を気遣ってのもので、香田にもクルーの気持ちを押しはかってもらいたいという思いがあったが、それも「社員旅行に来ているのではない」と押さえつけられ、元はため息をもらして窓の外に向き直った。

キャビンでは、なおも泣き叫び続けるるり子に触発されるように他の負傷者にも動揺が広がりつつあった。
そこへ戻った富樫は、鎮静剤を投与しようとする医師を制止し、るり子に語りかける。
まず、るり子の夫がホテル火災で亡くなったことを伝えると、事実を知らされても信じられないるり子は、そのあと富樫が掛ける言葉も聞こえないくらいの声を出して一層泣き叫ぶ。
タイムリミットの5分が近づき、コックピットからキャビンに連絡を入れると、その受話器越しに、富樫が必死の説得を続けているのが聞こえてきた。
夫がいないなら死んだ方がマシだと泣き叫ぶるり子に「あなたが死んだら誰がご主人のこと思い出してあげるの?」と問い掛けるも、「わかったようなこと言わないで!」とはね返されそうになる富樫だったが、それでも諦めずに、るり子の手を覆うように握って説得を続ける。
富樫「私は結婚してません。だからあなたが今どんなに悲しいか私にはわかりません。
   私だって死ぬ気で人を好きになったことがあります。悲しい別れも経験したわ。
   でも本気で好きになったから。その人は私の身体の中に今でもちゃんといるの。
   大事にしたいと思う。だって、それが『自分を大切に生きる』ってことだと思うから。
   だから、あなたも、大好きだったご主人のこと、ずっとずっと思ってあげて。
   だから、生きて。」
るり子は、富樫の言葉を聞き入れて泣きじゃくった。
香田「富樫チーフには5分で十分だったようだな」
5分遅れでテイクオフした帰路フライト中のキャビンでは、富樫が鎮静剤がきいていたるり子につきっきりでずっと手を握っていた。

夕方のオレンジに包まれて特別便は無事成田空港に到着。
富樫が病院までるり子を見送るとコックピットに連絡が入る。「わかった」とだけ言って席を立ちコックピットを出る香田に驚いて、元はすぐさま追い掛けた。
最後のフライトかもしれない富樫を待とうと言う元だったが、香田からは、富樫がいなくなれば他の誰かがそのポジションを埋めるだけのこと、とクルーへの配慮に欠ける言葉が返ってくる。
香田「代わりはいくらだっている」
「いや、富樫さんは富樫さんだけですよ。
  富樫さんの代わりは、他の誰でもないと思います。
  香田さんの代わりだって…くやしいけど、ぶっちゃけ他の誰にも出来ないと思いました」
初めて、香田を認めた気持ちを素直に出す元。しかし、香田の態度は変わらない。
香田「他人の評価をしている暇があったら、自分の今日の仕事の反省をしろ。
   自分の評価は自分で下す。富樫くんも自分の評価は自分で下すだろう。
   彼女が空を降りるという選択をしたら、それは誰にも止められない。
   おまえも余計なことはするな」
それだけ言ってシップを出て行く香田。元は信じられないといった表情で「マジかよ」とつぶやくが、その後は言葉に詰まり、1人残されたキャビンで大きなため息をもらした。

C.A.の集うフロアに富樫を捜しに行った元。
フロアの奥まで入らずに背伸びするように左右に身体を動かして捜すも、富樫は見当たらず、うららに捕まる。
うららは特別便の労をねぎらいつつ元を食事に誘うが、いつもの如くやんわりと断られてしまうのだった。

外はもう夜。
成田に戻ってきた富樫は、ターミナル入口そばの椅子ですっかり寝入っている元を見つけて声を掛けた。元は、その声に驚いて飛び起き、椅子から立って身を正す。
病院まで見送った相馬るり子はもう大丈夫ということで、富樫も報われたと語る。そして、報告書を書くからとターミナル内へ入っていこうとする富樫を元が呼び止めた。
いきなり「辞めないで下さい」という元に驚く富樫。
元は、教官に打診されていることを知っていて、それでも、一緒にシップで務めるクルーとして空を飛んでいてほしいと真っ直ぐに伝えた。会社の意向もあるからわがままは言えない、という富樫に、わがままな方がかっこいい、とも。
「あの…キャビンの女神っていうか…母っていうか」
これには富樫も心外といった様子で食ってかかり、思わず謝る元。
…で、何が言いたいの?
「いつまでもオレ達と一緒に空飛んでて下さい。…香田さんもそれを望んでいると思うし」
元の言葉に面食らったところに、香田の名前が出てさらに意外という面持ちの富樫だったが、元にお礼を言いながらも、地上に降りるどうか自分で決めるときっぱり答えた。
お互いに「お疲れ様」と言い合い、富樫はターミナル内へ。
後ろ姿を見送る元は富樫が遠く離れたのを見計らって「俺うぜぇ…」ともらす。さらに「…あー最悪」とがっくり肩を落として思い気持ちのまま帰途についた。

小雨の落ちる中バイクを走らせていた歩実は、お好み焼き屋の前で元の車を見つけた。
店の中をのぞくと、電気が半分消えている中で、元が1人わびしくテーブルに向かっている。中に入って背後から声を掛けると、思いっきりビクッと驚く元。歩実は、わざわざ元のテーブルよりも奥に入って違うテーブルへ。
機嫌の悪い元は、話し掛ける歩実にもテンションがあがらず沈んだまま。でも、違うテーブルに座った歩実に「嫌味っぽいぞ」と突っ込むのは忘れない。そう言われた歩実は、しばしの間をおいてから元の向かい側に座り、注文するは”デラックスお好み”特盛り2枚(!)。そして沈黙。
歩実「…『おまえそんな食うのー?』とか言わないの?」
「…おまえそんな食うの?」
歩実「暗いね今日」
「別に、いつもこんな感じですけど」
歩実「嘘だよ!いつもペラペラ喋ってるくせに」
「じゃ、おまえ喋れよ」
歩実「やだよ。…あたし食べるの専門だもん」
元と話しながら箸を取ってすっかりスタンバイOKの歩実は、元に断ることなくサクサクと野菜を鉄板にのせ、「これもらっていい?」と尋ねながらも返事を聞く前に箸でつまんだ煮物を口へと運ぶ。
「どんな女だよ」
歩実「別に女と思われなくていいし。」

2人しかいない静かな店内で元は重い口を開いた。
通常300人近い乗客を乗せて飛んでいる時よりも、たった何人かしか乗っけてない今回の特別便は、シップ全体が重い気がする、と。
それは、キャビンを整備をする時に色々思いを巡らす歩実にも理解できる言葉だったようだ。
歩実「全部の席のさ、表情が違うんだよね。
   1コのシップにはいっつも、喜びとか、希望とか、出会いとかと隣り合わせに、
   別れとか悲しみとかが座ってた。
   …それぞれの人生だからさ、人がどうこうしようとかそういうのは出来ないと思うけど、
   …それぞれの席に座る人に、『がんばれ、いいことありますように』って整備してる。
   だから、いっつもシップを見送る時は、私たち整備もすっごく大きく手を振って、
   『GoodLuck!』って声掛けてんの。」
歩実の言葉をかみしめてから、元は「たまにはいいこと言うよな」とつぶやく。
「いつもそうやってまともなこと言ってりゃさ、もうちょっとモテんのに」
歩実「よけいなお世話だよ!」
少し怒った様子で唐突にお好み焼きの具を鉄板に流し込む歩実に、まだ野菜があると思わずお好み奉行になる元。いつもと変わらない歩実と向き合っている時間は、とても心地のいいものだった。

後日、富樫は教官の話を断った。
もう1度考え直すよう説得を試みる上司。
富樫「お言葉ですが、私達C.A.は、確かにお飲み物やお食事も提供しますけれど、
   お客様によい旅だったと思っていただけるような、そういう時間や空間も提供しているつもりです。
   楽しいご旅行の方はもちろん、辛い旅悲しい旅の方には少しでもその気持ちを分かち合えたら
   …と思って今までやってまいりました。
   私はこれからも1人のC.A,として、仲間と一緒に、空を飛んで行きたいと思っています」
富樫の結論は揺るぎないものだった。

出社して喫茶コーナーでコーヒーと新聞を目の前に座る元。
新聞を広げると、病状も回復に向かい前向きに生きようとする相馬るり子を伝える記事が掲載されていた。
そこへ富樫が現れて、教官の話を断ったことを伝える。
「特別機は大変だったけれど、まだやるべきことがあるのではないかと思った」と語り、とりあえず元が機長になるまではC.A.を続けるつもりだと告げた。
怪訝な顔を見せる元に「なぜだかわかる?」と尋ね、その問いにも首をかしげる元の耳元に狙いを定めて近づいた富樫はこうささやいた。
富樫「ぶっちゃけ、あなたが好きだから」
固まってしまった元を見て、「ドキッとした?」と笑顔の富樫。なんだ、冗談…。もう元は空笑いで応えるしか出来ない。
富樫「今のが私の本音かもよ!?
   …まっ、まだまだ新海くんには見破られないだろうけど」
そう言った富樫は、手をヒラヒラさせてその場を去った。元は、楽しそうに去っていく富樫を見送りながら、固まったままでグルグルと思考を巡らせていた。

忙しそうにターミナル内を歩く香田は、反対側から歩いてきた富樫と向き合う。
富樫「これからもよろしくお願いします」
香田「こちらこそ」
香田と短いなりに心に伝わる言葉を交わした富樫は、晴れやかな顔で帰途についた。

元は富樫が去った時のまま、まだボーっと考え込んで一点を見つめていた。
しばらくして、ふと活路を見出したのか「うぅ(↑)!?」と目線を上にあげる。
でもやっぱり…???巡る思考はなおも続き、元はじーっと一点を見つめるのだった。

 

☆★ 今週のキメゼリフ

 

☆★ この顔!この仕草!!ファン必見のリプレイポイント

 

☆★ 今週のベストショット

 

☆★ レポ担発信”ぶっちゃけツボなんです!”

 

 


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