<OFFICE>
理子は真剣な面持ちで書類を書いている。そこへ哲平が帰ってくる。理子を横目で見て「ただいまっと・・・」
「・・・」無言の理子。哲平は理子の言葉を思い出す。
(「私吉本さんと寝たんだ。朝までずーっと一緒に いたの。」)
哲平は自分のデスクの上のピンクのイルカ(?)のぬいぐるみに向かって話し掛ける。「ただいまー」「おかえりー」「はい、よく出来たねー」(とぬいぐるみをなでまわす)「あいさつされたら返す、ボケたらつっこむ。これコミュニケーションの基本だもんねー。」
「・・・・」相変わらず無言の理子。
そんな理子の元にいただきもののお菓子が置かれる。横でまだぬいぐるみ相手に話している哲平を尻目に「お茶入れますー」と元気良く立ち上がる理子。そんな理子の後ろ姿を見つめながら、哲平はまた先日の喧嘩を思い出す。
(「好きじゃないならそういう事すんなよ」「哲平にそんなこと言われたくない。自分の気持ちごまかして誰かと一緒にいてもさびしいだけだって哲平が一番よくわかってんじゃん。好きな人、ほんとに好きな人他にいるくせに・・・。」)
ため息一つつきながら一服する哲平。そこへお茶を持った理子が来るが事務的に「どうぞ」とお茶を置いて通り過ぎる。みなさんどうぞおいしいですから、どうぞ取って下さい。」と声をかける理子。哲平も一つとり袋を開ける。そこにお茶を配り終わった理子が戻ってくる。理子の様子を伺いながら「食べますか?」と聞く哲平。じっと見つめる理子。少しニヤっとして哲平が自分の開けたまんじゅうを差し出すのと同時に理子は「どうぞ」と
まんじゅうの箱ごと哲平のデスクの上に置く。「・・・・・。」「あ、ごまついてる。」とさっき理子に差し出したまんじゅうを食べる哲平。理子の様子を横目で見るが、理子は相変わらず固い表情のままもくもくと書類書きをする。<夜・理子の部屋>
一人せっせと部屋の模様替えをする理子。「何やってんだろ?私・・・。」と自嘲気味な笑顔を浮かべる。哲平がお見舞いに持ってきたサボテンがアップで映る。
<夜・哲平の部屋>
明かりをつけるなり「ちっ」と舌打ちし、カバンをテーブルの上に放り投げ、背広の上着を脱ぎ捨て冷蔵庫をあける。なんでねぇんだよ。水くらい」と台所で蛇口をひねる。が、
水が出ない。「なんだよ。」と蛇口付近を叩く。2、3度叩くと水が出た。
「はぁーっ」とため息一つついたあと一気に飲む哲平。
<翌朝・OFFICE>
理子に「これお願いしまーす。」と書類を置いて出かけようとする哲平。
理子は何か言いた気な表情で哲平の姿を目で追う。その時黒崎が哲平を呼び止める。
「篠山フーズさんのプレゼンの資料、明日欲しいそうなんだ。」
「それはまた急ですね。」「いつも無理言うからなー。」
「・・・じゃあ朝一に全部揃えてびっくりさせてやりましょうか?」
「出来るか?」「んーーでも表見(?ちと聞き取れなかった)とかあるからなー。」
と、理子をちらっと見て「上杉が手伝ってくれたら何とかなるかもしれません。」と哲平。
そんな哲平の言葉に目を丸くする理子。
「上杉君今晩残業出来るかね?」「はい!!勿論です!!。」と笑顔で黒崎に答える。
「じゃ、いってきます。」と出しなに理子を見つめる哲平。しっかりと見つめかえす理子。出ていった哲平の後ろ姿に思わずにっこりしてしまい、真顔に戻ろうとするがどうしても
ニヤけてしまう理子。
<検察庁内>
さなえ、荘一郎、柏木(?)の三人が歩いている。
今日の仕事は早く終わりそうとの話から「久しぶりにどこかで食事でもしない?」と荘一郎に話し掛けるさなえ。「そうだね。」と荘一郎。
そこへ昔の彼女の白石奈美が・・・。
思わず視線をそらす荘一郎。「それじゃフィアンセをお借りするよ。」さなえは柏木と去る。
奈美が振り返り荘一郎を見つめる。
(「あなたは昔からそう。絶対に道を踏み外さない。結局自分の事しか愛せない。」と回想の声)
奈美は何も言わずに立ち去って行く。その姿をただ見詰める荘一郎。
<哲平のOFFICE>
黒崎に書類のチェックを受ける哲平。もくもくとPCに数字を入力する理子。
みんな退社し二人きりに・・・。
互いに沈黙のまま理子は哲平のデスクの書類を自分の所へ引っ張る。
じっと理子を見つめる哲平。
(哲平アップになり)「・・・あのさぁ。」と椅子毎理子の隣に来る。
書類に目をやり次の言葉を用意する哲平。
「結局あれだろ、こないだの・・・」二人の視線が絡み合う。とその時理子の携帯が鳴る。
出ようとしない理子にあごで出ろよのジェスチャーをする哲平。
「はい、もしもし・・・。」「理子?あ、あたし・・・。」電話の主はエリカだった。
「あ、吉本さん?こないだはありがとう。楽しかった。」自分のデスクに戻りタバコに火を付ける哲平を横目で見ながら理子は話し続ける。
「あ、わかったー。そばに哲平君いるんでしょ?」理子は構わずに続ける。
「今度いつ逢える?」「あのさー、そんなことして何かなるわけ?」
「え?今晩?ゴメン今残業中なの。え?ずっと待ってる?えー今日は見られてもいいパンツだったかな?」「イチゴのパンツだったら誰にも見られたくないでしょ?」「どうせ脱ぐからかまわない!?じゃあ、
終わってから行くわ。それじゃ・・・。」と一方的に電話を切る理子。
「・・・・・・」重い空気が流れる中、PCを打ち出す理子。ほどなく哲平は無言のまま理子のデスクから書類をわしづかみし自分のデスクへ・・・。さらに哲平は理子に目を合わすことなく
「いいよー帰って。お疲れ様ー。」理子は少し涙目になりながらもさっと立ち上がり出て行く。
そんな理子を横目で睨み付ける哲平・・・。OFFICEを出たところで哲平を見つめる理子。(やはり涙目)うつろな目でタバコを吸う哲平(のアップ)
<夜・カラオケボックス>
エリカと二人「津軽海峡冬景色」を熱唱する理子。
「ね、自分から嫌われるようなことしてストレスためてりゃ世話ないんだけど・・・。」とエリカ。
「だから発散してるんじゃん?」と天城越えをセットする理子。
「このままでいいのー?」「いいの。いっそ嫌われた方が楽だもん。」曲が始まり歌い出す二人。
<夜・とあるバー>
荘一郎が一人でやってくる。マスターとはなじみらしい。
「いやー懐かしい。何年ぶりかな?」「・・・4年ぶりです。ウイスキー。ロックで。」
「結婚して引っ越しでもしたのかと言ってたんですよ。」「・・・別れました。僕が彼女を捨てたんです。」
後ろを振り返る荘一郎。
(二人が付き合っていた頃の映像が流れる)
「彼女の母親には傷害で服役した過去があったんです。刺したのは彼女の父親でした。
検事としての将来のため彼女との関係を断ち切ったんです。」辛そうに出されたウイスキーを飲む荘一郎。
<翌朝・哲平のOFFICE>
都合の悪い広告データーをそのまま相手に渡してしまった哲平は朝から黒崎に大目玉をくらう。
「修正した数字も一緒に渡したろう。」と怒鳴る黒崎。哲平は理子を振り返る。
あわててPCをさわる理子。
「すみません。うっかりしました。」とあやまる哲平。
その資料は結局会議に出せず、資料なしですませたと聞いた理子は黒崎のもとにかけよるが哲平に阻止される。再度作り直して持っていくという哲平に「勝手にしろ」と吐き捨てる黒崎。
先に席に戻った哲平に理子は内線電話をかける。
「はい、もしもし。」「何?今の。何であたしのせいだっていわなかったの?」
「ま、俺のせいでもあるし・・・。あ、おまえ俺と口きいてんじゃん。」
「・・・私なんかにやさしくして何になるの?」
「・・・・・・」無言のまま互いを見つめる二人。
<哲平の部屋>
水道管が破裂し水浸しになった部屋の映像。
被害は下のカレー屋にまで及び、苦情の電話が会社に入る。
哲平は昨日の失態をわびるべく篠山フーズへ行って留守。
理子は帰りに寄ってみる。と、そこにはさなえが来ていてすでに掃除を始めていた。
<篠山フーズ>
哲平は黒崎と二人出向いたが、書類を突き返されその場を後にする。
「お前が一生懸命やっているのはわかる。が、今結果を出す事ではない。
多少は自分をごまかさないと長いサラリーマン生活やっていけない。」と黒崎は忠告する。
「じゃあ、今のこの時間は何なんですか?今の積み重ねが今の自分の将来だとしたら、今の気持ちを大切にしたいです。器用に世渡りして自分が傷つけられるの避けていくのってカッコ悪くっていやなんですよね。」と哲平は苦悩の表情で黒崎の前を歩いていく。
<フーラ>
エリカ、吉本らが集まっている。
「どーしたの?最近いそがしいんだ?」と吉本。
「だって、お前今日理子とデートだろ?」と哲平。
「え?理子ちゃんと?俺が?」「!?あ、ちょっとゴメン。」と二人は店の外へ。
<哲平の部屋>
理子は青竹踏みをしながら掃除を手伝う。
もくもくとかたずけに励むさなえをみながらも言葉を発せない理子。
手にもった雑巾を固く絞る。
<再びフーラ>
哲平はあの日の夜理子が熱をだし寝込んでしまい吉本とは何事もなかった事を知る。
「それにしても何であんな嘘を俺に付いたんだろ?」「哲平君が好きなのよ。あの子素直になれないの。」というエリカの言葉に戸惑いを隠せない哲平。
パーっと騒ごうよと吉本に誘われるが「やっぱ帰るわ。」と哲平は足早に店を出る。
<哲平の部屋>
家に戻った哲平。部屋の惨状に唖然とする。
「水道管破裂して大変だったの」というさなえの言葉に驚きながらあわてて部屋の中へ。
その時哲平は洗濯物の影に隠れる理子の姿を確認していたが気付かぬふりで台所へ。
戻ってきた哲平に理子は「会社のみんなに押し付けられていやいややってるだけだって。」と強がる。
さらには「私こいつと口聞かない事になってるんで・・・。」とさなえに言う。
一冊の本を手にした哲平。「え、うそだろ・・・」その本は哲平の一生を決めた大切なものだった。
水浸しで背表紙までとれてしまっている。ぼろぼろになった本をめくりながら
「高校の時バスケばっかりやって将来の事何も考えてなかったじゃん?その時流行ったじゃん?
コピーライターって・・・。広告の仕事を俺の一生の仕事にしようって。」と語る哲平。
「本なら買えばいいじゃん。」と言う理子。「無理だよ。もう絶版だから。でも、おれ、ほら(とネクタイを掴みながら)営業に異動になったからもういいのかもしれない。」と深いため息交じりに言う哲平。
「じゃ、私は帰るから・・・。」とズボンの裾を直しながら部屋を出ようとする理子。
「お礼に飯でもおごるから」「いいってば。・・・」と行こうとする理子。「いいじゃない。働いたんだから。」と理子の腕を掴むさなえ。「・・・・・ぐぅーーー。」と理子のおなかが鳴る。
<カレー屋>
三人(向かって右 哲平、左
さなえ、さなえの向かいに理子)が食事をしている。
辛いスープを飲むさなえを気遣い水を注文する哲平。
理子も辛いーとリアクションするが哲平には伝わらない。「私の時と態度違うーーー」ぶすっとする理子。
そこへ荘一郎が来る。家へ戻りさなえの書いた伝言を見て駆けつけたらしい。
「水浸しってどういうことだ?」「ごめんなさい。私慌てちゃって大袈裟に書いたかも・・・。」と笑顔で言うさなえ。その場は和やかな雰囲気に。
(画面左下にガラスのリンゴ)
検察庁の柏木から連絡があったと聞きTELする荘一郎。「え?白石奈美が?」TELを切り
「仕事が出来たから・・・。」と席を立つ荘一郎。「・・・・・」顔を見合わせる三人。出掛けに「ここごちそうして」と言い残し荘一郎は店の外へ。
「・・・ったくねー盛り下がるような事して・・・俺なら結婚考え直しちゃうねー。」とさなえに言った哲平にムカっときた理子。「昔ふった男にいつまでも気使ってるのっていやじゃないですか?あたしは絶対いやだ。」「私は・・・」とうつむくさなえをかばう哲平に、理子は「困ってるのは自分のくせに・・・」とつっこんでしまう。「お前だって自分の気持ちに素直になればいいじゃん。」
「私の気持ちって何?私の気持ちなんて全然わかってないくせに。仕事だって私に優しくするのもみんな自己満足でやってるだけじゃない。」
「わかった様な事言うなよ。そんなこと言うんだったら帰れ。」
またもや険悪なムードの二人。
「わかった帰るわよ。」と足早に店を出る理子。哲平はムッとしたままパンを食べる。
<店の外>
「上杉さーーーん。」とさなえが追いかけてくる。
噴水の前で、さなえはさっきの喧嘩はすごく哲平の事を思いやってるように聞こえた。ひょっとして負けず嫌い?と理子に聞く。
さらに「てっちゃんはいつも前向きな人。昔から決して後ろを振り返らない人だから・・・」と聞かされ
決心する。
そして哲平の(水浸しでだめになった)本は自分が探すのでさなえには探さないでと言う。
すがすがしい笑顔でさなえと別れ一人歩く理子。
<哲平の部屋>
ダイニングの椅子に座りさっきの理子の言葉を思い出す哲平。「私の気持ちって・・・」
<哲平のOFFICE>
理子は風邪で休みと聞く。哲平は篠山フーズに営業へ。
外に出ようとする哲平の携帯が鳴る。理子からだった。
「風邪大丈夫?」「・・・ずる休みー。大事な用があってさ。」と聞いた哲平は「あなたの人生ですがら
お好きなように。」と呆れてTELを切ろうとするが「耳寄りなお知らせ。今日8時にいいことがあるの。
「残業かもしんないから。」という哲平に「来ないと絶対後悔するよー。ほんじゃね。」と一方的にTELを切る理子。
<ホテルの一室>
白石奈美に呼び出された荘一郎。「追われている?ご主人に?心配しなくていい。何でも相談にのるから・・・。」と声をかけベッドの傍らに座る奈美に近づく。うつむいていた奈美が突然笑い出す。
「全部嘘。こうでもしないと二人きりになれないじゃない?」困惑と怒りから荘一郎は奈美を正視出来ない。「抱いて・・・。」「・・・俺には婚約者が・・・」「わからないの?抱いてって言ってるの。結婚してとは言わないわ。」と荘一郎の肩にもたれかかる奈美。「それが過去の償いになるのか?」
「そう思いたければそれでもいい。時間をうめて欲しいの・・・。」と荘一郎の首に手を回す奈美。
そんな彼女の背中に手を回してしまう荘一郎。
<荘一郎の部屋>
荘一郎が昨日忘れたシステム手帳を届けに来た哲平。
さなえに「食事していって」と誘われるが「今日はちょっと・・・」と言うのと同時に家の電話が鳴る。
とりあえず部屋に入った哲平。
TELを切った後、不安げな表情で哲平を見つめるさなえ。
荘一郎が仕事を休んでいたと聞かされる。
<待ち合わせ場所>
(哲平の部屋の冷蔵庫に貼ってあるポスターと同じ種類の大きな広告の前・
True love never runs smoothの文字) 一人寂しく待つ理子。
<荘一郎の部屋>
何となく落着かない様子の哲平。「もしかして上杉さんと待ち合わせ?行ってあげて。」と促すさなえ。
「あいつのギャーギャー騒ぐ声聞かないと寂しいから・・・」と哲平。
「喧嘩は仲の良い証拠か・・・。」と寂しそうにつぶやくさなえ。
<待ち合わせ場所>
理子の携帯が鳴る。哲平からだった。
哲「もしもし・・・」
理「ごめん。いけなくなった。」
哲「先に言うなよ。」
理「えーーーーーーーっ!?絶対って約束したじゃん。
もしかして・・・さなえちゃん?」
哲「う、うん。」
理(涙目になりながら)「駄目なんだよ。今ここでなきゃ
駄目なんだよーーー。」
哲「わかったよ。遅れるけど行くから・・・。」
理「・・・もう来なくていいよ。」
哲「行くっていってんじゃん。」
理「・・・もう遅いよ。」とまた一方的にTELを切る。
哲「・・・ったく何なんだ!?」と困惑する哲平。だがやはり理子の事が気にかかる哲平は
「俺、やっぱ行くわ。」と立ち上がった瞬間、荘一郎が帰ってくる。
欠勤の説明を求める哲平に「お前には関係ない」と吐き捨てる荘一郎。
さなえに説明しろと哲平に促された荘一郎は、昔さなえが通訳したゴウと言う男の妻が不正入国で強制送還されそうになり、何とかならないかと動いていた。と話す。
「そうなんだ・・・。」と安堵の笑顔を見せるさなえ。
哲平は「じゃ、俺本と急ぐから・・・」と部屋を後にする。
<待ち合わせ場所>
猛ダッシュで待ち合わせ場所に到着する哲平。
時計は8:25・・・。そこに理子の姿はない。周囲を見渡した時大きなスクリーンに
「大好きなあの人へ送る あなたのメッセージをお伝えします」 お申し込みは インフォメーションセンターへの文字が・・・。
何かに気付いた様子の哲平。インフォメーションセンターへ駆け込む。
「今日8時ちょうどにメッセージの依頼ありましたか?」
係の人が笑いながら依頼の文を哲平に見せる。「!?」思わず口元がニヤける哲平。
(外に出て)早速理子の携帯にTELするが留守電(のふりをする理子)
「あ、俺だけど・・・。さっきはごめん。もう一度10時に約束した場所で逢えないかな?今度は俺が待ってるから・・・。待ってるからな!!!。」とTELを切る。
(左端にガラスのリンゴ)
さっき理子が座っていたパネルの前に座る哲平。
9:45、50、55分と時計を見て不安になる哲平・・・。
55分過ぎに哲平の携帯が鳴る。
理「留守電聞いたけど、どういうこと?」
哲「いったとおりだけど・・・。」(とメッセージボードの方に歩き出す)
理「もう遅いんじゃない!?人生には取り返しの付かない
こともあるんだよ。」(哲平の向こうに理子らしき人影が・・・)
哲「悪かったよ。俺そんなさぁ大切な事だと思わなかったからさぁ。」
理「絶対来てって言ったでしょ!?」
哲「いつもいい加減な事ばっか言ってるからさー、
こういう時真実味がないんじゃないの?」
理「・・・・さよなら」
哲「おい、ちょ、ちょっと待てよ。約束破った事謝るから・・・。」
理「・・・本当にそう思ってるんなら、そこで逆立ちして。」
哲「!?ここで?」
理「するの?しないの?」
哲「あん、わかったよ、やるよ。やるから」(と地面に手をつきやるような素振りだけする)
理「やってる?」
哲「え?あ?う、うんやってるやってる。」
理「うそつき」
哲「あ!?何でわかるんだよ ?まじでやってるって。」
(バシっと背中を叩かれる)
哲「はい!?」と振り返るとそこには理子が固い表情で哲平を見つめている。
理「はっ、そういう奴だよね。」と吐き捨てるように言う。
「・・・・。」うつむく哲平に理子は「はいっ。」とあの本を差し出す。
理「すっぽかされて捨ててやろうかと思った。でも出来なかった・・・。哲平が何か悲しそうなの見てこの本探したいなと思ったの。でもそれは私の気持ちだから・・・。哲平が私の事どう思うかは関係ないんだよね。」
哲「・・・・。」言葉はないがちょっと微笑む哲平。
理「だから・・・。はい。」と本を差し出す理子。
「じゃあね。」と立ち去ろうとする理子。「ちょっと待て。」背後から哲平に声をかけられ振り返る理子。
理「何?」
哲「あ、時間だ。」
理「何の?」
哲「おれたちがキスする時間。」
理「!?何それ!?勝手に決めないで・・・。」
哲「俺、マジで後悔した。約束すっぽかした事・・・。
ここで逢いたかった。」
うっすら涙目の理子は正面のメッセージボードに目をやる。
そこには「love for sale」の文字が・・・。
(BGMは「幸せの結末」)
哲平 「スキスキスキスキスキスキスキスキ」 あなたの理子ちゃん(打ち上げ花火が三発)
理子
俺も好きだ!!! 哲平(うつむく哲平)
「・・・・なーにあれ!?あんなんでキスなんかさせないよ。」
ウルウル状態で精いっぱいの強がりを言う理子。
哲「いいじゃん。減るもんじゃありまいし。」(振り返って理子に歩み寄る)
理「いやだよ。スケベ。」(ポケットに手を入れながら後ずさりする)
哲「スケベでするわけじゃねぇもん。」
理「じゃあ何でしたいのよー」
哲「したくてしちゃいけないの?」
理「そうよ。何事も条件ってもんがあるでしょ?
気温とか湿度とか歯磨いたかとかその日の体調とか・・・。」
哲「あっ。」大声で理子を指差し近寄ってくる。
哲「あ、あいつぅぅ、持ってろ。ほら持ってろ持ってろ。」と自分のカバンとプレゼントされた本を理子に無理矢理持たせ、理子の目の前で人差し指を左右させ「ほら俺写ってんじゃん。」
そっとキスする哲平。(一回目)
呆然と目を見開いたままの理子。「・・・・・・・・」(しばし沈黙)
理「それだけ?」
哲「えっ!?」
哲平に駆け寄り理子からキスしようとするが持っていた本で哲平の後頭部を叩いてしまう。
哲「いってぇーーーー。」歩み寄り理子のおでこを叩く振りをして理子の顔を両手で押さえまたキス。(二回目・今度はちょっと長め)
抱き合い笑顔で見詰め合う二人・・・。
打ち上げ花火があがり、おでこにキスの後、もう一度キス(三回目)
(ガラスのリンゴ) つづく・・・。 |