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ラブ・ジェネレーション
** レポート **


第9話
「別れ」


Reported By No.199 莢子姫


 

抜けるように青い空のもと、理子が両親の経営するペンション「ピーポロ」に着く。誰にも連絡せずに帰ってきたのだ。

東京では哲平が課長らとともに接待の真っ最中。先方に「元気のいい女の子がいたよね」と言われる。理子のことだ。ずっと休みをとっている。

接待を終えて帰宅する(1)。テーブルの上の手品の道具が眼に入る。理子に投げつけられたものだ。最後に会った晩のことがよみがえる。着替えるためにポケットから携帯電話を出し、貼ってある理子とのプリクラに眼を留める。隅が剥がれかけているのを直す哲平。

ペンションの手伝いをする理子は父にいぶかしまれるが、有休をたっぷり取ったと言ってはぐらかす。ひさしぶりに帰ってきたというので、その夜の食事は鍋だ。嫁いだ姉二人もいる。受験のために上京する予定の妹に、理子は東京の男の悪口をさんざん言い、ふられたんでしょと逆にからかわれてしまう。

終業後、資料の数字が合わないため、飲みにいく誘いも断わって残業していた哲平は、ふと思いついて電話をかける。

ペンションで暖炉に火を焚いていた理子が電話に出る。哲平とわかるが、間違いだといって切る。間違いでないことは、すでに声でばれているのだが。

エリカとカフェで逢い(2)、理子の母親が体が弱く、帰ってきてほしがっていことを聞かされる哲平。なぜさなえとキスしたのかと尋ねられ、ぎくりとする。理子はエリカに話していたのだ。中途半端なやさしさは女を傷つけると言いながらも、エリカは理子の帰京の日時を教えてくれる。

東京に帰る理子を、父親が地元の駅まで送ってくる(3)。何くれとなく世話を焼き、哲平とうまくいっていないなら帰ってこいと言われるが、理子は強がってみせる。

一方、荘一郎とさなえは仲人宅を訪れ、婚約解消によって迷惑をかけたことを詫びていた。検事としての出世に響くから考え直してはと言われるのを聞き、さなえは自分に非があると言いかけるが、荘一郎に先を越される。帰路、あなたを誤解していたというさなえに、以前は確かに保身第一だったが、いまはさなえの気持ちが一番大切だという荘一郎(4)。

東京駅に理子が降り立つ。階段をおりてくると、改札の外で哲平が待っている。無言で駅を出るふたり。哲平は理子の荷物を取り上げて、ぎごちないながらも言葉をかけ、寒いだろうと自分のマフラーをはずして首に巻いてやる(5)。

歩き疲れた理子は、故郷でどれほど哲平のことを考えたか話す。哲平は、さなえとはその後逢っていないと言い、どちらが好きか聞こうとする理子に、皆まで言わせず「おまえ」と答える。だが、さなえをゼロにしてほしいと言われると即答はできない。わがままかと問いかける理子に、「ぜいたく」とやり返したことで、ようやく二人の顔に、辛うじて笑みが戻る。

アパートの自室に戻った理子は、ひさしぶりで鉢植えに水をやる。こたつの上のさぼてんにも(6)。

親から荘一郎が正式に婚約を解消したと聞かされた哲平は、兄の部屋を訪ね、パーティの日にアルバムを燃やすほど哲平を愛しているさなえをどうするつもりだと聞かれる。逆に、「オレにも大事な存在が今はいる。でも水原がひとりでいたらほっとけない。なぜちゃんと捕まえとかなかったんだよ」となじる哲平。

カフェで朝食のパンとジュースを取ってきて、理子をさがす哲平。うしろから膝をぶつけ振り返らせる理子(7)。独身サラリーマンの哀愁が背中に見えたと言われた哲平が、「最近ごぶさたしてるからねえ」と答えたのが理子は嬉しい。しかも哲平は、その夜にもさなえに会ってきちんと気持ちを伝えるという。まだ足りない、逆立ちしてパルコまで行けと言い、「逆立ち禁止さてんの」と応じる哲平のパンを一つ奪い、「聞いてんの?」と突っ込まれる。もうすっかりいつもの二人だ。

一緒に出社すると、同僚たちにけんかしたんだろうと噂していたといわれ、哲平は苦笑するしかない。課長に接待に同行を言いつけられた哲平が断わろうとするのを察して、理子が代わりを買って出る。さなえと逢ったあとで電話するから逢おうと言われ、もうそのときは自分だけの哲平だと嬉しげな理子だが、哲平本人は気が重い。

終業後、会社を出てくる哲平(8)。不安そうな面持ちで待っているさなえ。遠くから先に気付いた哲平にはつらいものがある。

理子は接待の席で盛んに取引先を持ち上げる。

哲平はさなえを自宅のある建物のインド料理屋につれていく。気まずい雰囲気が続き、やっと哲平が口を開きかけたとき、さなえが笑顔で中国行きを口にする。上海に仕事口を世話されたというのだ。

電話がないので気になって時計を見る理子。接待はバーに場所を移している。

食事を終え、店を出たところで、さなえは哲平に中国語で「メリークリスマス」と言う。クリスマスにはもう日本にいないから、と。帰ろうとするさなえを哲平は思わず、渡したいものがあると呼び止める。

接待がおわった理子は、飲み直すという課長らと別れる。

哲平は部屋にさなえを通し、卒業アルバムを出して持っていけと言う。自分が、壁にぶちあたると昔に戻りたくなり、向き合うべきことから逃げてきたように、さなえもまた荘一郎から逃げようとしているように見える、と。

所在なげにカフェに入る理子。

アルバムを開いて微笑むさなえ。

携帯電話のプリクラ(9)を見た理子は、少し考えた末に席を立つ。

さなえと哲平は高校時代の思い出話をしだす。全国大会に負けたというので、主将の哲平がマネージャーのさなえともども噴水に投げ込まれたのだ。

インド料理屋の前まで来た理子は、哲平の部屋の明りがともっているのに気付く。ちょうどそのとき、こらえきれなくなったさなえが部屋を飛び出そうとし、はずみでドア脇のスイッチを押し、明りを消してしまう。理子の足がとまる。いやな記憶が甦る。

さなえはついに泣きだす。「どうしてまたてっちゃんに会ってしまったんだろうね」と。不安になった理子は部屋に電話をかける。哲平が何か言いかけたときに携帯が鳴り、思わず出そうになるが、「出ないで!」というさなえの言葉に思いとどまる。

近づこうとするさなえに、「ごめん」と断ち切るように言い、キスしたことを詫びる哲平。涙をぽろぽろこぼしながら「わかった」と言い、今度こそ帰ろうとするさなえに、アルバムを持っていけと渡す。自分にはもう不要だと。

理子が外にいると、さなえがアルバムを大切そうに抱えて出てくる。理子がいることに気がつくものの、無言で毅然と歩み去る。最悪の予想がうらづけられたと思い込んだ理子は、哲平が電話しても出ない(10)。

次の朝、出社してきた哲平を理子は笑顔で迎え、接待が長引き、地下にいたので、電話をくれたとしてもわからなかったと言う。哲平は説明しようとするが、遊園地に連れていってくれと言われ、話すきっかけを失う。課長がそんな二人を危ぶむように見守っている。他の者のためにコーヒーをいれようと理子が席を立つ。哲平に背を向けるや、表情が一変して暗くなる。

昼休み、課長は哲平とそばを食べながら、ふたりの仲を案じる。前のことがまだ尾をひいているのだとしか思っていない哲平は、もう大丈夫だと安心させる。

荘一郎が仕事から帰宅し、テーブルの上にさなえの置き手紙を発見する。さなえと連絡がつかないので、哲平の部屋を訪れる(11)。中国行きの件を知っていたのなら、なぜ教えてくれなかったと責められた哲平は、前の晩に聞いたが、むりに元気そうにしていて見ているほうがつらかったと答える。荘一郎には返す言葉がない。

同じ頃、やかんのたぎる音だけが聞こえる暗くした自室で、理子は壁際に座り込み、泣いている。父親の言葉が脳裏をよぎる。見つめる先にはさぼてんが。

休日を利用し、遊園地で二人はゲームに興じる(12)。理子のほうが何をやっても調子がいい(13)が、本当に楽しんではいない。乗り物を提案する哲平に、ゲームばかり主張してげっそりさせる。正月に帰省するのかと聞かれ、しかたがないというように曖昧に答える。

哲平はコーヒーをふたりぶん買ってくると(14)、理子に手を出させ、長野行きの切符を渡す。二枚ある。「もうひとりにしないから」と言うが、理子は突き返して席を立つ。追ってきた哲平をなじる理子。まさかさなえとのことを疑われているとは思っていなかった哲平は暗然となる。

いくら否定しても理子は信じない。その日一日、やさしくされればされるほど寂しかったと言い、「もう疲れた」と去っていく。

「理子!」

だが振り向こうともしない。なすすべなく立ちつくす哲平の手には、くしゃくしゃになった二枚の切符が握られていた・・・。

 

今回のはまりどころ
1. なんとインドの女人像の後ろにあのポスターが。
2. 哲平のオーダーは意外にも、生クリーム山盛りのウインナコーヒー。
3. 理子の実家の最寄り駅は渕東。
4. タクシーをよけるのにふたりそれぞれ別の側に。象徴的。
5. マフラーをはずしたあと、思わず寒そうに体をこわばらせる。今回はなぜか寒そうにするシーンが多い。
6. 水が多すぎる。さぼてんは水をやりすぎると、却ってカビが生えたりしてだめになる・・・。ゴクリと飲んだ音もしていたが。
7. はずみでオレンジジュースが少しこぼれている。
8. この季節にコートなしの哲平。やはりどことなく寒そう。
9. 哲平の携帯にはツーショットのプリクラと理子ひとりのものが。理子のにはツーショットのほうだけ。
10. 理子は哲平の携帯番号を短縮登録してあるが、哲平は理子の番号をフルで押していた。
11. 哲平がここでも妙に寒そうだ。帰宅したばかりで部屋が暖まっていないのだろうか。
12. 後ろのフライング・パイレーツから判断して、うちから電車で20分の豊島園と思われる。
13. 当然ながらバスケのシュートゲームは別だ。
14. 理子がテーブルのほうへ行くのを見て、ゲーム場をちらりと見、「さすがにあれはだめだったか」と言うようににやり。 

 


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