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-1度目はストーリー、2度目はセリフや表情を。素敵なドラマは何度も楽しめる。-


このページは、No.1133 哉子がお伝えします。


★ 第11話 「運命」 

★☆ ストーリー

涼が優子を背後から抱きしめたことでつながる2人の火傷の跡。
完三との血のつながりがないことを、優子が淡々と語る。
そして転がるやかん。
こぼれたお湯がかかった手を水にさらしながら、涼の中で新たな記憶が蘇る。
父親が命を絶たれた瞬間を目撃した5才の自分の隣に優子が―。
涼は幼い頃に描いた絵を手に、空を仰ぎ、その瞳に涙を溜めながら「妹かよ…」と声をしぼり出した。

買ったばかりの薬を手に、優子は、ただひたすらに涼の許へ走り続けた。
しかし、優子が戻った涼の部屋に、涼の姿はなかった。
取り残された優子は、床に放られた涼の絵を見つけて、その場に座り込み、手に取った絵に目を落とした。

自宅でうどんを作る完三の中にも、25年前の記憶が巡っていた。
そこへ帰宅する優子。
完三は、優子が徹夜で残業してきたものと思って、気遣いの言葉をかけた。
その言葉を受け取りつつも朝食を遠慮して2階の自分の部屋へ入った優子は、持ち帰った涼の絵を開いた。

そして優子は、由紀に会いに行った。
由紀は、以前忠告した涼の姿をもう1度口にした。
身体はあっても心を感じない涼。
それでも、涼を求めていつも探し回って苦しかった頃のことを話す由紀。
もう苦しくないの?―そう尋ねる優子に、由紀は、完三のおかげで苦しくなくなったと答えた。
完三自身が人を殺しても今こうして生きていると話してくれたことで立ち直れた、と続けて語る由紀に、何も知らない優子は驚きの表情を見せて呆然とする。
帰宅した優子は、完三と夕食をともにしたが、完三本人に由紀から聞かされた過去について、どうしても問いただすことが出来なかった。

優子は、再び涼の部屋を訪れたが、依然涼の姿はなかった。
鳥かごの隣に腰を下ろして広げた涼の絵にもう1度目を落としてから、もとに戻そうと折りたたみながら冷蔵庫を開けると、優子は息を飲んだ。
冷蔵庫の中には拳銃が無造作に置かれていた…。

堂島家の電話が鳴り、受話器をとる完三。
完三が出てくれたことにホッとする、その声の主は、涼だった。
用件を尋ねる完三に、涼は、父親が殺人犯だったという話の続き―妹のことを聞かせてくれと言った。

さびれた倉庫で待つ完三の前に、涼が現れた。
完三が指定した場所のようで、あまりの人気のなさに、自分が完三を殺める可能性を口にする涼。
完三は、誰にも聞かれたくない話をすることを考えて、この場所をしていた。
誰にも…いや、これは優子に聞かれたくない話だ。
涼は、完三に確認するように優子が自分の妹だということを言葉にして、加えて何故完三と暮らしているのか尋ねた。
涼の問いに腹を据えたのか、完三は吸っていた煙草を消して居ずまいを正し、最初から話す、と答えた。
涼は、そんな完三に煙草を勧め、その中から完三が取り出した煙草に、そして自分がくわえた煙草に火をつけ、完三の横に腰を下ろした。
涼が腰を下ろすのを待っていたように、完三は、過去の真実を話し始めた。

25年前、涼の父は金に困って人を殺した。
居場所を見つけたのは完三で、応援を待つように言われたものの自分の手柄にしたかった完三は、1人で踏み込んだ。
向かってきた涼の父にびびった完三は、とっさにピストルの引き金を引いてしまった。
結果、正当防衛とはいえ父親を殺してしまったことで涼とその妹が残った。
頼れるような親戚もいなかったので、完三が引き取って育てようとしたが、その兄妹は火傷を負って入院した。
そのうち兄の方が、事件のショックで記憶を失ったまま、病院から逃げ出してしまった。
名前もわからないまま逃げ出した5才の男の子を、あちこち探したが、とうとう見つからなかった。

よう、生きとったなぁ…。
真実を語り終えた完三は、しみじみと涼に語りかけた。
すると涼は、その後の自分を語る。
誰かが待っているような気がして走り続けた…でも誰も待ってなかったけどね、と苦笑する涼。
走り続けた後、目が覚めたら女の人に拾われていて、それが育った施設のシスターだと、完三に話して聞かせた。
それから幸せだったのか、という完三の不用意な問いに、呆れたような表情を浮かべ「面白いこと聞くね」と言い放つ涼。
完三は思わず謝罪の言葉を口にするが、重い沈黙が続く。
沈黙を破るように、完三に歩み寄った涼は、自分と優子が兄妹なのか、もう1度確認した。
そうや、と言ってうなずいた完三の答えに、涼は、妹を思って殺人犯の父親と歪んだ自分の存在を蔑み、何処かで死んでいればよかったと言う。
そんな涼に、それは違うと、涼は妹思いの優しい兄だったと、完三は、25年前のその時のことを再び語る。
完三に撃たれて倒れた父親へ走り寄った優子が、ストーブの上のやかんをひっくり返した時、涼は優子をかばって覆いかぶさった。
だから、涼の方が火傷の跡が大きいのだ、と。
涼の火傷の跡は、涼が優しい兄だったことを示すものだ、と。
優しい兄だった自分を教えてくれた完三に、涼は「ありがとう」と言って、「案外いい思い出あるんだね、これ」と服の下の火傷の跡を指差して笑う。
でも、優子は、この忌まわしい過去を知らないのだ。
完三は、優子を育てた兄としても刑事としても失格だと自分を卑下して、実兄である涼に全てを任せる、と告げる。
復讐したらどうする?―完三の前に立ち、こう尋ねる涼に、完三はそれも仕方ないと答えた。
無言のままうなずいた後その場を去ろうとする涼を呼びとめ、完三は、拳銃を持っている涼の危うさを心配する。
今度渡す、と曖昧な答えを返した涼に、それはいつだ、と尋ねる完三。
その前に撃ってるかも。そんな言葉を軽々と口にした涼は、再び完三に背を向けて去っていった。

涼を探す優子は、裕希がバイトするバーにまで足を伸ばしていた。
裕希に涼の行方を尋ねようとするが中々言葉に出来ない優子に、もう少ししたら涼が来ると言って小百合が擦り寄ってきた。
小百合を知らない優子は誰なのか尋ねたが、さぁ誰でしょう?とはぐらかし優子の名前を口にする小百合。
そして小百合は、面白い噂話をするような口ぶりで、涼の父親が殺人犯であることを優子に教えた。
驚きで声の出ない優子をさらに惑わすように小百合は話を続けようとしたが、そこへ涼が現れて強引に小百合を引き寄せバーから連れ出しそうとしたことで、話は途切れた。
優子は、そんな2人を引き止めた。
―いや、優子は涼を―、先に振り返った小百合を遮ってまでも、涼を引き止めたかった。
ようやく向き合った涼に、ちゃんと話してよ、と言う優子だったが、涼は小百合の手を取って冷たくあしらう。
優子は、バカみたい、と言うのがやっとな程のいたたまれなさに涙を溜めながら、バーを出て行った。

小百合の部屋へ行った涼は、必要なくなったからと言って拳銃を返した。
再び小百合が持ち掛けたレストランの共同経営の話も、あっさりと断る涼。
距離をおこうとする涼を引き止めるかのように、今度は優子のことを持ち出す小百合。
小百合は、優子が何も知らないのをいいことに、優子にまつわる過去の全てを告白しようか、と匂わす。
そんな風に涼を弄ぶように話していた小百合の声は、涼が撃った銃声によって消された。
倒れた小百合を前に、うつろな表情を浮かべていた涼は、おもむろに立ち上がり、さらに2発小百合に撃ち込んで空を仰いだ。

優子は杉田と会っていた。
完三が人を殺したという過去を確かめようとする優子に、杉田は真実を伝える。
25年前、追っていた殺人犯を撃ってしまい、正当防衛とはいえ完三の心の傷になっていることを。
その心の傷に、これからも触れないで欲しい、と完三を気遣う杉田。
優子は正当防衛の相手であるその殺人犯のことが気になって尋ねたが、それは涼の父親であると言う杉田の答えに愕然とし、涼が完三への復讐のために自分に近づいたと思い始めるのだった。

TVのニュースが小百合の死を報じた。
それを目にしたのだろう、涼の部屋へ向かった優子は、真っ先に冷蔵庫の扉を開けた。
冷蔵庫の中には、拳銃も、涼の絵も、何も入ってなかった。
見つけたい一心で、上段の冷凍庫の扉も開けると、1枚の紙がすり抜けて床に落ちた。
床に落ちたその紙を手にした優子は目を見張る。
それは、涼が施設に戻ったときにシスターから渡された作文だった。
涼の部屋で読んだ作文の内容を、帰り道で、帰宅した自宅で反芻する優子の目に、TVの中で容疑者と呼ばれる涼が映った。

完三が帰宅すると、優子が2階から降りてきた。
完三が話す涼のことに知らぬ振りをして、うどんを作ってみたと、優子は笑顔を見せた。
うどんをすすった完三は、味が薄いだの、お兄ちゃんのレベルに来るには時間がかかるだの、いつもの調子で文句を言った。
だが、優子はいつものように言い返したりせず、自分は完三の妹だから完三は自分がを守る、と強い意志を見せた。

涼の行方はわからないまま、目撃者もいない状況で、捜査本部は警戒を強めていた。
そんな中、涼は、あの廃屋に舞い戻っていた。
連れてきた小鳥の声だけが響くその廃屋の中で、パズルを作っていた。
「見上げてごらん夜の星を」を口笛で奏でながら、パズルを作る涼の目に溢れる涙。
止めることができない涙を、せめて落とさぬように、涼は空を見上げた。

杉田は、優子が完三と本当の兄妹ではないと知っていながらも完三が普通に愛してくれたからそれでいいと言っていたことを、完三に伝えた。
完三は、殺人犯である涼の父親が優子の父親でもあることも教えたのかと問い詰めたが、杉田は、以前この秘密を墓まで持って行くと言っていた完三の意志を尊重して、涼の父親と優子との関係だけは口にしなかったことを強調した。
そして、優子が完三への復讐のために近づいたとして涼がもたらす危険を理解してくれたと報告する杉田。
しかし、それは間違っていると繰り返す完三に、杉田は、怪訝な表情を見せた。

その頃、木々に囲まれた電話ボックスから、涼は誰かに電話をかけていた。

人気のない夜の日の出署で完三がうどんをすすっているとき、堂島家には裕希が訪れていた。
完三が不在であることを知ると、そのまま帰ろうとする裕希を、優子が引き止めた。
何の用かと強気で尋ねる優子を前に、裕希は即座に答えることができずに戸惑うばかりだった。

涼は、鳥居が沈む湖のほとりで小鳥を放した。
包みこんでいた両手をゆっくりと広げると、小鳥は羽をはばたかせ大空を舞う。
小鳥のぬくもりが残る両手を空にかざしたまま、涼は独り空を見上げた。

夜勤を終えて帰宅した完三を待っている人間はいなかった。
何度も優子を呼ぶ完三だったが返事はない。
2階の優子の部屋へ行き、そこで涼の絵を見つけて思い立った完三はすぐさま車を走らせた。

廃屋に戻った涼は完三を待っていた。
裕希が無事完三に会えたものと信じて…。
しかし、ドアが開く音に振り向いた涼の表情が凍る。
涼の視線の先には、優子が立っていた。

優子は、完三は来ないこと、警察が涼を追っていることを知らせ、小百合が邪魔になったのかと尋ねた。
優子の問いにサラリとうなずく涼の様子は以前と変わらないように見える。
あなたのゲームのコマにはならないと、おさえきれぬ怒りをぶつける優子に、涼は何も答えない。
すると優子は、無造作に置かれていた拳銃をおもむろにつかんで、銃口を頭に向けた。
微妙に変わる涼の顔色から本物の拳銃であることを知って、優子の中に、怒りよりも悲しみが広がっていく。
完三への復讐のために自分に近づいたのかという問いまでも、優子の前に腰を下ろして肯定してしまった涼の姿に、今までの言葉、一緒にいた時間、自分に触れた手、その瞳、その声…、涼の全てが嘘だったんだと悲しみをあらわにする優子。
私のお兄ちゃんは私が守る。そう言って、優子は頭にあてていた銃口を涼に向けた。
そのとき涼は―笑顔を見せた。
場にそぐわない涼の笑顔に困惑する優子。
それでも涼は笑顔を見せ、頬伝う涙もそのままに、優子への気持ちを言葉にした。
「俺、愛とかそういうの、よくわかんないけど…優子のことは愛してた」
言い終えた涼が立ち上がった瞬間、銃声とともに放たれた銃弾が涼の身体を貫き、倒れる涼の手によって、完成していたパズルのピースがはじかれて空を舞った。
持っていた拳銃を床に落とし、動かぬ涼に手を延べて泣き崩れる優子は、涼のポケットから完三に宛てた手紙を見つけた。
『堂島完三様
 あんたと会うと、もうちょっとこの世で遊んでもいいかなって気がして
 決心が揺らぐような気がするから、手紙で…失礼。
 三田の女子大生も、西原美羽も、柏木小百合も、あんたの思う通り、俺がやった。
 俺は小さい頃から人の愛とか、大人になってからも男女の恋とか、そういうの一切お手上げだった。
 だから人をだまして、その心をテトリスのバーみたいに都合のいい所に落として、遊んだ。
 人が死んでも、あんまり悲しくなかった。
 壊れたオモチャみたいに、そんなことを繰り返した。
 でも、あんたの妹に会って、変わった。
 初めて人を好きになった。
 嬉しかった。悲しかった。苦しかった。恋しかった。愛しかった。
 だから彼女が俺の妹だと知ったときは、さすがに参った。』

震える手で手紙を読んでいた優子は、驚愕の事実に目を見張り、救いを求めるように手を延ばした。
手を延ばした先には、幼い頃の涼と優子が過ごしていた部屋がそのまま残されている。
優子は涼にすがって再び泣き崩れた。

『あんた、優子を俺に返すようなこと言ったけど、優子は、あんたの妹だよ。
 あんた、よく俺のこと悪魔って言ってたけど、今、やっと人間になれたような気がしてる。
 …遅すぎたけど。
 最後に、優子を引き取って、今まで育ててくれたあんたに、心から感謝します。
 本当にありがとう。
 沢田省吾』

完三が廃屋に到着したときは、すでに夜の闇が立ち込めていた。
警戒しながら廃屋に足を踏み入れるが涼と優子の姿はなく、床に広がる生々しい血に嫌な予感がして、完三は外に出た。

夜の闇の中、涼を抱えてさまよう優子の脳裏には、涼と過ごした時間がよみがえる。
そして、涼が遺した最後の言葉が巡り、力尽きるように泣き崩れた優子は、目の前の景色を見つめる。
それは、涼が描いていた絵のままの風景だったのだ。
やっと見つけたその風景に涙が溢れる。
再び涼を抱えようとして抱えられないもどかしさに顔を上げたとき、優子はボートを見つけた。
優子は、涼を横たわらせたボートを、力を振り絞って湖に押し出し、湖面に浮かんだのを見計らって涼の横に乗り込んだ。

湖にたどり着いた完三は、湖の真ん中に浮かぶボートに優子を見つけ、優子の名を何度も叫んだ。
優子は完三の声に振り向いたものの、完三の許へ戻ることはなかった。
横たわる涼の手を取り、完三には笑顔と「ごめんね」という言葉を残して、銃口を自分に向けた。
響く銃声。
銃弾に倒れ、ボートから見えなくなった優子に、完三は、その場にひれ伏し、優子の名を叫んだ。
優子を包むように、涼に包まれるように、ボートの中で眠り湖面を漂う2人には、もう完三の声は届かなかった…。

完三は涼―『沢田省吾』の遺書を読みながら、警察の現場検証にあたった。
気遣いながら声を掛ける杉田とともに、空を見上げる。
「こんなとき、こんな日に、空から降る星は…綺麗やな。」
そう言って、完三は、ボートの中で眠る涼と優子に目を落とした。

後日、杉田に涼の真意を語る完三。
完三の周辺を探って優子の生い立ちを知った柏木小百合から優子を守るために涼は動いた。
そうすることで優子も自分も守ったのでは…と語り、完三は煙草をくゆらせた。

完三が日の出署を出ると、由紀が待っていた。自首しにきたと言う。
一緒に行こうかと持ちかける完三に、1人で大丈夫と微笑む由紀。
由紀は、死なないで欲しいと、罪を償ってくるまで待ってるようにと、完三の手を取って半ば強引に指切りをして、日の出署の中へ入っていった。

完三は、星降る夜に涼と優子の最後を見届けた湖へ再び足を運び、2人ヘの花をたむけた。
そして、吸っていた煙草を湖に向けて投げ入れ、新たな煙草に火をつけて歩き出した。
歩き出したその足元に、カセットテープを見つけて拾い上げる完三。
カーステレオにテープを差し込み、車を走らせると、「見上げてごらん夜の星を」が流れ始める。
その歌にのせて、脳裏に浮かぶ25年前の情景と涼と優子の面影に、完三はむせび泣いた。
赤信号で止まったとき、カーステレオからテープを取り出した。
やがて青に変わるが、テープに見入る完三は、後続の車にクラクションを鳴らされてしまう。
ふと顔を上げた瞬間、涼との出会いがオーバーラップする。
追い越していく車が徐々に小さくなっていくのを見つめていた完三は、手の中のカセットテープを助手席において、再び車を走らせた…。
 

☆★ 今週のキメゼリフ

☆★ この顔!この仕草!!ファン必見のリプレイポイント

☆★ 今週のベストショット

☆★ 今週のキーパーソン

 

 


★「空から降る一億の星」INDEX★

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