1、はじめに宮内庁発表平成 14 年 12 月 24 日の宮内庁の発表によれば、
「天皇陛下には宮内庁病院で実施した前立腺の画像診断では異常がなかったが、血液検査の結果から前立腺の項目の数値が通常より高かったため、24 日には 腰部に麻酔をして 組織の 一部を切り取る生体検査をする。25 日には退院されるが、検査の結果は年明けに判明する。」実は私も天皇陛下と同じ昭和 8 年 ( 1933 年 ) 生まれですが、1 年半前に超音波画像診断 ( エコー )、直腸診などから前立腺肥大と診断されました。それ以来、定期的に医師の診察を受けていて、肥大の治療薬 ( 抗男性 ホルモン剤 ) ではなく、排尿の筋肉に作用し排尿を容易にする ( アルファ ・ ブロッカー ) の薬を毎日服用しています。 ホームページの タイトルである 「 シルバー回顧録 」 の回顧とは 「 昔のことを振り返ってみること 」 なので、現在進行中の病気について掲載するのは、いささか場違いの気がしないでもありません。 しかし掲載することに決めた理由は先月 ( 14 年 12 月 ) になって、医師から 前立腺 ガンの可能性 もあると告げられたからでした。 2、前立腺肥大とは
この病気になるまでは前立腺について名前は聞いて知っていましたが、その正確な場所もまた肥大すると、どのような症状になるのか全く知らずにいました。前立腺とは右図に示すように膀胱の出口にあって、尿道の周囲を取り囲む栗の実の形をしたもので、成人男性では縦 3 センチ、横 2 センチほどの大きさです。 栗の実の尖った方が下を向き、表面はなめらかな弾力性がありますが、前立腺肥大になると鶏卵大にまで肥大し、進行した前立腺ガンでは表面がでこぼこして硬化します。
なぜ肥大するのか前立腺肥大について正確な表現をすれば、前立腺そのものが大きくなるわけではありません。前立腺の組織内に発生した、 繊維腺腫 という 「 良性の腫瘍性病変 」 つまり 「 腫れ物 」 が大きくなることにより、その結果として前立腺が全体として肥大してくるのです。この 「 腫れ物 」 は前立腺の中にできた小さな結節から成長してきますが、男性 ホルモンと加齢の二つの要素に密接な関係があることは明らかです。しかし男性は老化すると 「 なぜ前立腺が肥大する、つまり繊維腺腫が成長する 」 のか、について種々の 「 仮説 」( 注参照 ) が存在するものの、世界の学会で広く認められた正確な原因は現在のところ 「 不明 」 です。
注:)
自覚症状(1)、刺激症状膀胱内に尿が十分溜まらなくても前述の繊維腺腫の肥大が原因となり、それが膀胱を刺激して尿意を催すため排尿回数が増加し頻尿となります。特に夜間の就寝中にも頻尿となり安眠を妨げます。
(2)、小便の切れ、閉塞症状 医師の話によれば小便の出方よりも、 むしろ止まり方が重要で あって排尿が途中で途切れる、又ははだらだらと止まるのは 肥大が進み、腹圧を掛けないと排尿できない証拠なのだそうです。 更に進むと飲酒の後などに 「 尿閉 」 と称して尿道が充血により圧迫閉鎖され、小便が急に全く出なくなり苦しむ事態にもなります。 前立腺ガン尿道が圧迫される肥大の原因としては前述の良性な 「 腫れ物 」 による前立腺肥大症の他に、悪性腫瘍である 「 ガン 」 による前立腺肥大の場合もあるので注意が必要です。ガンは前立腺の周辺部 ( 外縁近くの内部組織 ) に発生する場合が多く見られますが、それに限らず一般の ガンと同様にどの部分にも発生します。しかし他のガンに比べて 病気の進行が遅い という目立った特徴があります。
P S A 検査P S A ( Prostatic Specific Antigen=前立腺特異抗原 ) とは前立腺の細胞だけが分泌する タンパクで、タンパク分解酵素の一種です。採血により得た血液中に含まれる P S A の濃度を測定することにより、前立腺 ガン存在の可能性を知ることができる 「 腫瘍 マーカー 」 です。しかし P S A の値が正常値より高いから必ず前立腺 ガンであるとは限らず、前立腺肥大症でも P S A の値が上昇する 「 偽陽性 」 もあります。また前立腺 ガンでありながら P S A の値が低い 「 偽陰性 」 もあるので安心はできず、あくまでも有力な判断の目安にすぎません。 なお P S A の検査には 7 種類以上の方法があり、それぞれの方法により正常値の範囲が異なります。
3、私の場合平成 12 年 7 月、 K 病院の P S A の検査では正常値 4.0 以内のところ、2.7 で 正常でした。平成 13 年 6 月 、T 病院の検査では正常値 2.1 以下 ( CLIA 法 ) のところ、2.4 で やや高め のため、排尿障害もあったので、 大病院の泌尿器科で受診しました。
注:)
生体検査生検とは前立腺にガンがあるかどうかを確定するために、畳針のように太くて長い生検針を前立腺に刺して組織を採取して調べる検査 のことで、エコー( 超音波画像診断装置 )の モニター画面を見ながら自動生検装置を使い直腸から前立腺の左右に 3 〜 5 本ずつ、合計 6 本ないし 10 本の生検針を刺します。採取した組織について ガン細胞の有無を顕微鏡を使い詳しく調べるため、結果が出るまでに 1 週間以上かかります。 しかしこの検査方法も 100 パーセント確実ではありません。端的に言えば、 柿の実に針を刺して タネ ( ガン細胞 ) を探すようなもので、運が良ければ タネ ( ガン細胞 ) を刺すことができますが、悪ければ タネ(ガン細胞)に当たらないこともあります。
そのため P S A 値が高いにもかかわらず ガン細胞が発見されないため、何回も生検をしてようやく ガン細胞を発見した例もあります。
選択肢組織検査の結果からもし前立腺 ガンと診断されたならば、選択肢は 二つあります。その 一つは手術により ガンや場合によっては更に付近の リンパ節も 一緒に取り除く方法と、他は手術をせずに抗男性 ホルモン療法、放射線療法をおこなう治療方法です。しかし ガンの手術をすれば場合によっては失禁や インポテントなどの後遺症を伴い、 Q O L ( Quality Of Life、日常生活の質 ) の 低下という問題が生じます。
今後の方針私の場合は検査結果が 1 月末か 2 月に分かるのでそれからどうなるか判断します。たとえ ガンの宣告を受けても平成 15 年には 70 才を迎え、これまで自分の好きな様に人生を過ごしたので思い残すことや、家庭の心配事は何も無く、あるがままに運命を受け入れるだけの心の準備はすでにできています。もし運よく ガンでなく単なる前立腺肥大症であるとしても、排尿障害があるので肥大部分の除去手術をしなければと思っていいるので、 今後どのように推移するか不明ですが、その体験を逐次 ホームページに掲載して皆様の参考に供したいと思います。
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