[ 1 : お知らせの到来 ]
その昔学校の教科書で習った漢詩に
少年老い易く学成り難し、一寸の光陰軽んずべからず−−−。というのがありましたが、これは朱子学の始祖、朱熹 ( しゅき、1130〜1200 年 )が書いた詩の 一節で、題名は 「 偶成、ぐうせい 」 です。私は今年 ( 平成 18 年 )の 4 月でとうとう
73 才の 「 老爺 」 になりましたが、その間ずっと 「 光陰 」 を軽んじてきた為に、
学も成らずに平均寿命が近づきました。
ところで誕生日の 2 ヶ月前に県の公安委員会から 「 高齢者講習のお知らせ 」 という葉書が届きましたが、サンデー毎日の記にある [ 23 : 昔の米国の運転免許試験 ] で述べたように、生まれて初めて アメリカで車の運転を始めてから 49 年 が過ぎました。
その間に米国本土、ハワイ、カナダ、ニュージーランド、イギリス、ドイツで車を運転しましたが、幸運にも外国で交通事故を起こしたことも無く違反もゼロでした。日本での交通違反といえば大阪に転勤した際に、貸家探しで不動産屋が書いてくれた地図の通りに車を運転して行ったら、一方通行違反で捕まり切符を切られたのが 1 回と、あとは車同士の 「 かすり傷 」 程度の接触事故が 1 回だけで、これは交通違反にはなりませんでした。自分で言うのも おこがましい のですが、安全運転については、まずまずの出来だと思っています。
[ 2 : 高齢者運転講習とは ]
以前は 75 才以上の老人を対象にして、免許更新に先だっての講習が義務付けられていましたが、平成17年4月の道路交通法の改正により、受講者の年齢範囲が 70 才以上に拡大され、従って枯れ葉 マークを付ける特権( ? )も、70 才以上に変わりました。警察による老人愛護の精神 ( ? )には、ありがたくて涙がこぼれますが、機会があれば 百均 ( ヒャッキン ) で 憧れの マーク を購入し車に付けるつもりです。
私にとっては今回が最初の高齢者講習になりましたが、これまで私の免許証は 「 優良 」のいわゆる 「 ゴールド免許 」 で更新は 5 年毎でしたが、道交法上の高齢者になった今回からは 3 年毎の更新 に変わりました。高齢者講習の受講期間は免許更新をする年に属する誕生日の前 2 ヶ月から後 1 ヶ月の間で、講習を終了した際にもらう 「 高齢者講習終了証明書 」 が無いと、運転免許の更新手続きができない仕組みです。「 お知らせ 」によれば自分で近くの自動車教習所に予約して講習を受けるのだそうですが、その際の持参品とは
1:運転免許証
2:高齢者講習の「はがき」
3:筆記具
4:印鑑
5:講習手数料、6,150円
ということでした。
早速最寄りの自動車教習所に電話で予約をしたところ、高齢者講習の予約が多いため 2 週間後しか予約が取れませんでしたが、今回の講習年齢の拡大措置により自動車教習所がかなり潤っている証拠でした。予約の際に講習の内容を尋ねると、車の実地運転もあると言うので慌てました。実は大型免許を持つているものの、これまで大型車など一度も運転したことがなく、ダンプカー でも運転するのかと尋ねると普通の乗用車だというので胸をなでおろしました。
生まれて初めて自動車教習所に行くと、そこは パブリック・スペースが広く取ってあり一見 ホテルの ロビーのような雰囲気で、運転の教習を受けに来た若い女性がたくさんいました。少子高齢化の時代に入り自動車教習所も 今後は運転免許の新規取得人口の減少が予想されるので 、若い人や女性の集客に懸命なことが感じられ、子育て中の女性教習者の為には託児所まであるのには驚きでした。
[ 3 : 講習の実際 ]
午前の部は10 時から講習開始でしたが、同年配の 「 爺さん、婆さん 」 が 15 人ほどいました。それを車の運転講習、座学、適性検査の 3 組に分けて後で順次交代する方法で講義が始まりました。私の組は最初は運転適性検査から始まりましたが、検査は ドライブ・シミュレーターの映像画面を見ながら、 ハンドル操作と車間距離を保つ為のブレーキ操作で車を道路上に走らせるもので、ハンドル操作では オーバー ・ コントロールを避けるのが運転の 「 コツ 」でした。
その際に視力測定、動体視力、夜間視力の低下体験などがありました。ここで測定した視力が、運転免許の更新 センターでおこなう視力検査に代用されるのかと思ったら、「 センターでも視力検査を受けて下さい 」 の答が返ってきました。
運転講習は 1,500 ・ CC クラスの車で、教習所の車としては旧式の使い古したものでしたが、受講者が 2 人 1 組で車に乗りました。私が最初に運転することになりましたが駐車ブレーキを外すために、自分の車のつもりで左足で駐車ブレーキを外そうと探しましたがそこには無くて、センター・コンソルにある駐車ブレーキを左手で操作する方式のものでした。教習所内の コースを走るのは町中の運転と変わることはなく、特にいうべきことは無くて 8 分間で終了しました。
次に私の相棒が運転を交代しましたが彼は工務店を経営する「 爺さん 」で、トラックを毎日運転しているそうですが、「 オートマ車はこれまで一度も運転したことが無い 」とのことでした。そのせいで出発する際には、左足を バタバタ動かすだけで車がなかなか動き出しませんでした。
指導員から オートマ車では クラッチが無いので、右足で アクセルと ブレーキ を操作するように指導されていましたが、慣れない為に操作に苦労していて運転に不安を感じた後席の私は、急いで シート ・ ベルト を着用しました。ところで帰宅後に家人から聞いた話では講習は試験ではないので、近所に住む ペーパー ・ ドライバーの奥さんでも、高齢者講習の運転をどうにか終了できたのだそうです。
座学では最近の事故統計から老人が交通事故の被害者になるだけでなく、高速道路を逆行したりして加害者になる場合が多いことなどを聞かされました。過去の経験を過信せずに、反射神経などの肉体的能力が低下していることに注意するようにとのことでした。今回高齢者講習を初めて受講しましたが、正直いって 2 時間半の講習で 6,150 円は高過ぎると思いました。
更にいえば事故防止の必要性から高齢者講習の範囲拡大をしたというよりも、前述した少子高齢化に伴う免許取得人口の減少と、高齢 ドライバーの増加により、警察 O B が多数天下りをする自動車教習所の収益確保、経営の安定化の為にこの拡大したとしか私には思えません。今後は同じ目的から高齢者講習の範囲を、 65 才 以上に拡大しないように祈ります。
[ 4 : 外国における免許更新の現状 ]
自動車先進国の アメリカを初め、イギリス、ドイツなどの E . U. ( ヨーロッパ連合 ) に加盟する国の運転免許制度では、高齢者運転講習どころか運転免許の更新時に 講習を義務付けている国などは、世界中で どこにもありません 。
それどころか米国では更新手続きが非常に簡単で、
郵送や インターネットによるほか、州によっては F A X による更新手続きも可能でした。免許の有効期限については州により異なりますが、カリフォルニア州では 5 年、昔住んだことがある フロリダ州では 6 年毎の更新でした。
- 写真は E U ( ヨーロッパ連合 )に所属する ドイツ の運転免許証ですが、有効期限がありません。
- イギリスでは平成10年 ( 1998年 ) までは免許証に写真の表示も無く、現在も 70 才の誕生日までは運転免許の更新がありません。70 才を超えると80 才までは 3 年毎に更新し、80 才以上になると毎年更新する仕組みです。
- フランスでは一旦運転免許を取ったら、 死ぬまで更新の必要がありません 。
しかし2003年 ( 平成15年 )に E. U. の欧州委員会が、加盟する 15 ヶ国 ( 2004 年からは 25 ヶ国に増加 ) に対して出した指示 ( Directive )によれば、
運転免許には有効期限を設けること 。その場合は自動車、オートバイでは 10 年 とすること。
65 才を超える者には有効期限を 5 年とすること。
- 現行の各国の免許制度は、26 年後の 2029 年までに法律の整備を終えること
という内容でした。更新時の講習が無いからといって、イギリスや フランスが、日本より交通事故が多いというわけではありません。
考えてみて下さい。毎日多数の人命にかかわる仕事をしていながら、日本の医師免許は一旦取得したら ドイツや フランスの運転免許と同じで、死ぬまで有効であり、 医師免許の更新や講習の法的制度もありません 。
- それに比べてなぜ車の運転免許を、3 年 〜 5 年毎に更新しなければならないのか?。
- なぜ外国には無い講習義務を、 7,400 万人 の免許保有者に課すのか?。
その根拠について例えば
高齢者講習を実施したことにより、老人が加害者である 交通事故がどれだけ減ったのかなどの、統計的数字 がこれまで全く公表されていませんが 、私にとっては到底理解し難いものです。
講習時に示されたものは老人の加害者と老人の被害者を
合計した老人の事故という ゴマカシ の数字 だけでした。
高齢化が進むにつれて老人の ドライバー人口は増加します。従って 老人による事故の件数が増えるのは至極当然のことです 。それをあたかも事故率が高くなったかのように宣伝しているのにすぎません。高齢者になれば長距離運転はしなくなるし、大部分の人は病院通いや買い物に行くだけであり、私のように年に 2 千 〜3 千 キロ しか走らなくなります。
警察、交通安全協会、自動車運転教習所のおこなう高齢者講習、運転免許の更新時の講習とは、
警察官の天下り O B による、 利権の産物 と思うのは私だけでしょうか?。
[ 5:交通安全協会の収入源 ]
諸悪の根源 は警察の O B のみが天下る、財団法人の交通安全協会です。
講習手数料は、県により多少の違いがあります
内訳 | 優良運転者講習 | 一般運転者講習 | 違反、初回講習者 |
更新手数料 | 2,100円 | 2,100円 | 2,100円 |
講習手数料 | 700円 | 1,050円 | 1,700円 |
合計 | 2,800円 | 3,150円 | 3,800円 |
(1):高齢者講習からの収入
日本の総人口 1 億 3,000 万人のうち運転免許の保有者は 7,400 万人いるそうですが、高齢者講習の対象となる 75 才以上の老人 ドライバーの数を少なく見積もって、仮に 5 パーセントとすれば 370 万人になります。その人達が 3 年おきの更新の際に運転免許の更新手数料以外に 6,150 円の講習料 を余分に払うとすれば、年間の受講者数の 123 万人掛ける 6,150 円となり合計金額は 75 億円になります。 しがない年金暮らしの老人達 から巻き上げた 75 億円以上の金が、全国の自動車教習所の懐に入ることになりますが、教習所だけが 「 旨い汁 」 を吸うわけではなく、そこに天下った警察官 O B も 「 おこぼれ 」に預かることは間違いありません。
(2):交通安全協会の収入
運転免許にかかわる最大の収入はそれの更新制度にあります。前述した免許人口 7,400 万人が 3 年〜 5 年毎に支払う手数料は莫大な収入を生み、少なく見積もっても 年間 130 億円以上( 注参照 )にものぼりますが、その収入が警察 O B の天下り団体である 「 交通安全協会 」に入るという構造です。
つまり日本で免許更新の講習制度が存在するのは、交通安全協会という名前の、 警察 O B 専用の天下り、集金組織 があるからです。
注:)計算根拠
今回の道交法の改正により免許の更新が原則 5 年になりましたが、前述の更新手数料は優良運転者と一般運転者の中間をとって 850 円とします。総免許人口 7,400 万÷ 5 年= 1,480 万人( 年間の免許更新者数 )。1,480 万人×875 円= 130 億円になります。
これ以外に全国の自動車教習所で使用する 「 交通の教則 」 という、警察庁交通局監修、全日本交通安全協会/全日本指定自動車教習所協会、連合会発行の教本の販売がありますが、それによる 数十億円の収入 には触れずにおきます。
[ 6:昔の免許更新 ]
参考までに マイカーが普及しなかった昭和 30 年代初期の免許更新の様子を話しますと、私が住んでいた地方では運転免許の更新に行くと警察署の近くに代書屋が店を構えていて、更新申請書の代書などをして手数料を稼いでいました。
文盲でもない のに大の男が代書屋に頼まないと更新申請書の記入方法や証紙の割り印のことで、警察の運転免許課で ケチを付けられるのが嫌で私は頼んでいました。ところで今でも警察署には運転免許課があるのでしょうか?。昔は町に代書屋の看板がありましたが、最近では行政書士とか司法書士とかの名前になり代書屋とは言わなくなりました。
庶民の間で マイカーが持てるようになり運転免許人口が増え始めた昭和 40 年代になると、警察の免許受付窓口に間借りして交通安全協会の事務員がいるようになり、入会を条件に更新申請書の書き方を教えてくれました。
[ 7:M B S 毎日 テレビの放映 ]
昨年( 2005年 )8 月のこと大阪の毎日 テレビが兵庫県の交通安全協会主催の警察との宴会のことを報道し、安全協会の在り方について厳しく批判しました。
それによれば、
6 月に神戸市内の ホテルの宴会場で兵庫県交通安全協会の懇親会が開かれて、各地の安全協会役員など 100 名が出席しました。代金は全額交通安全協会が負担し、各 テーブルには コンパニオン もいて費用は 1 人 1 万円の豪華版でした 。
この費用は ドライバーが支払った交通安全協会の会費や、前述した更新時の講習手数料から支払われたものに間違いありません。交通安全とは何の関係もないことに、多額の費用が使われた一例でした。
更に去年まで兵庫県のある地域で交通安全協会の会長を勤めていた男性が、その実態を 毎日 テレビ の レポーターに明かしました。それによれば、
交通安全対策などというのは方便です。実際は交通安全協会職員の給料ですわ。 80 パーセント は給料で、安全の為に使う費用は 20 パーセント 程度です。署長の異動時の餞別や、警察署での柔剣道、逮捕術などの演武始めや大会には寄付をしますし、時には個人宛てに付け届けもします。
なお交通安全協会は上記の件に関する、毎日テレビ の取材申し込みに対して拒否したそうです。
[ 8:放映後の更新窓口の変化 ]
平成 18 年の 4 月に高齢者講習の終了証明書を持って、兵庫県伊丹市にある阪神更新 センターに運転免許の更新に行きました。以前の更新窓口では交通安全協会の年会費 500円の 5 年分、2,500 円を 当然の如く、 半強制的に 更新手数料に加算して請求していましたが、今回は窓口が 更新窓口と、安全協会の入会窓口との二つに分かれていました。
毎日 テレビの放映以来交通安全協会に会費の無駄使いに関する苦情の電話が殺到したために、入会窓口を別にせざるを得なくなったからでした。しかし更新窓口での手続きを終了した人に対して、安全協会への入会を勧める黒服の女性事務員が フロアーにいて、しきりに勧誘していましたが、私の見たところ入会者は 4 割程度でした。
交通安全協会の無駄使いに反発した人が増えた結果でした。写真の右側緑色の看板 ( 交通安全協会入会窓口 ) の下が協会の入会窓口で、黒服の背の高い女性が勧誘員です。
私の主張は、交通安全協会への入会窓口を、本来関係の無い免許証の更新窓口に並べていること自体がおかしいのであって、交通安全協会との腐れ縁を断ち切る為に別の建物に移すべきだと思う次第です。
[ 9:更新のお知らせ、ハガキ ]
一部に誤解している人がいますが、たとえ交通安全協会に
加入していなくても 、公安委員会から
「 運転免許証更新のお知らせ、ハガキ 」 は 必ず来ます からお間違えなく。私は今回から、交通安全協会への入会を止めました。ハガキには
兵庫県交通安全協会は、道路交通法の規定により、兵庫県公安委員会からの委託を受けてこの事務を行っています。
と明確に書いてありました。ハガキ の発送は本来県の公安委員会の責任であって、交通安全協会は単に通知の事務を代行しているだけに過ぎません。